現在、東京大学生産技術研究所西千葉実験場跡地にある二つの木造校舎は、1942(昭和17)年、東京帝国大学第二工学部の共通第三教室棟および応用化学棟として建てられたものです。
東京帝国第二工学部は、当時、工学部卒業生の需要の激増に応じるため設立されました。学生は、本郷の第一工学部と同等に割り振られ、機械、電気、土木、建築、船舶、造兵、応用化学、冶金、航空、航空原動機の各学科および共通教室が設置されました。
開学にあたっては、千葉市の熱烈な誘致活動がありました。第二工学部教職員・学生の利便性にあわせて、総武線西千葉駅が新規に開設されるとともに、京成浜海岸駅は現在のみどり台駅の場所に移設されて帝大工学部前駅に改称されました。
建物の外観は、下見板張ペンキ仕上に瓦傾斜屋根がつきます。
内部は、当時の木造建築の耐震・耐風対策の指針を踏まえて、方杖が使われているのが特徴的です。廊下の連続方杖のほか、部屋の形状・大きさにあわせて、三方・四方方杖が使われています。旧応用化学等の床まで届く巨大方杖や逆三角形型の壁柱は、他ではほとんど類を見ないものです。
また、小屋組は、丸太を使った梁がかけられ、一部斜材で補強する形となっています。丸太を巧みに組み合わせ、伝統的な「追掛け大栓継」も見られ、和と洋の技術が混在しているところが見所です。
さらに、内部には、化学実験に使う「ドラフトチャンバー」が残っています。ドラフトチャンバーは、熊本の旧第五高等学校のアルコールランプ式、学習院大学のガスバーナー式換気システムのものがありますが、機械式換気システムを備えたものとしては、現存最古のものである可能性があります。

所在地:〒263-0022 千葉県千葉市稲毛区弥生町